梅雨明けしてから連日の猛暑。あまりの暑さにバイクに乗る気力が湧かなかったのですが、少し曇っている日を狙って7月末にツーリングに出かけました。
今回の目的地は、大阪市の天保山(てんぽうざん)公園。「日本で一番低い山」天保山があると聞いた記憶があり、登ってみようと思ったのです。
■アクセス
天保山公園は、水族館、観覧車、遊覧船発着場、ショッピングモール、ホテルなどが集まる観光スポット「天保山ハーバービレッジ」のすぐ横です。「~ビレッジ」には駐車場はもちろん、バイクが停められる駐輪場もあります(※観覧車のあるロータリーから入れます)。
電車なら大阪メトロ中央線の大阪港駅から歩いて数分です。
〇大阪観光局公式サイト「OSAKA-INFO」
■歴史スポットでした
公園に入ると、陶板の大きな浮世絵がありました。
階段を上って近づいてみると江戸時代の賑やかな様子が描かれており、ここは人気の行楽地だったようです。
目の前に見える現在の景色とは随分違っていますが、開発が進んだこともありますし、浮世絵なのでデフォルメもあるのでしょうね。
絵を過ぎて進むと、右側に小高い丘が。丘の上には展望スペースのような物も見えたので、多分これが「日本一低い山」天保山だろうと思いました。
しかし正面に大きな塔が立っていたのも気になって、そちらを先に見に行くことに。
塔に記された説明によると、これは「明治天皇観艦之所碑」で、明治元年に明治天皇が新政府軍の軍艦をここから観閲したことを記念して建てられたそうです。大阪市のホームページには、これが日本最初の観艦式になったと書かれていました。また、その観閲の2か月ほど前、鳥羽伏見の戦いで新政府軍に敗れた徳川慶喜が旧幕府軍の兵を残して江戸に帰ったのも、ここ天保山からだそうです。
〇大阪市ホームページ 港区の歴史
ちなみに写真は撮っていませんが、この碑の少し手前には灯篭のような形をしたモニュメント(?)があり、それには坂本龍馬と妻・お龍の写真がありました。これも調べたところ「日本初の新婚旅行 旅立ちの地」を記念した物で、龍馬夫妻がここ天保山から鹿児島へ旅立ったのだそうです。
何も知らずに来ましたが、この公園は色々な歴史のスポットになっているんですね。
■「日本一低い山」
さて、碑を見終わった時、後ろに緑色の立て札があることに気づきました。
ん?と近づいてみると、なんと「日本一低い山」の山頂を示す看板でした!
登った意識が全く無いまま、あっけなく山頂に到達です。ここに至るまでの道のりを思い出すと、公園入口すぐの階段と、碑のすぐ手前の緩やかな傾斜ぐらい。これで4.53メートル登ったことになるわけですね。さすが「日本一」、低すぎます。
しかし、公園内にはもっと高い丘があるのですが、一体どういうことなんでしょう?気になるので色々調べてみると、意外な経緯が分かりました。
①公園内の高い丘は、大阪港開港100周年を記念して展望台を設けるため1970年に作られたもので、山ではないそうです。
②浮世絵に描かれていた景色より随分低くなっているのは、山が削られてしまった(幕末に砲台の台場を作るための土砂に使われた)ことと、地盤沈下のためだそうです。天保山は天保年間に川を浚渫した際の土砂を積み上げて作られた人工の山で、20メートル近い高さだったようです。
③そして最も意外だったのは、ここ天保山は日本一低い山ではない、ということ。
ご存知の方も多いのでしょうが、2014年に宮城県仙台市の日和山(ひよりやま)に抜かれてしまったそうです。日和山は元々標高が6.05メートルだったのですが、東日本大震災の津波によって山が削られてしまい、改めて測量したところ標高3メートルとされたそうで・・・。
「日本一低い山」については、国土地理院が作成する地理院地図への記載を根拠として、天保山と日和山とで争われた経緯があるようです。現在、天保山は「三角点がある山としては日本一低い」としているようですね。三角点とは正確な測量のため設けられた位置の基準点のことで、確かに立て札の前の地面に埋められていました。
経緯については色々なWEBサイトで説明されていますが、日本経済新聞の記事が一番分かりやすくまとめられていると感じました。
〇日本経済新聞「大阪・天保山 vs. 仙台・日和山 日本一低い山は?とことん調査隊」
私は以前に聞いた頃のまま、てっきりに天保山が「日本一低い山」だと思っていたのですが、情報が古くなっていたようです・・・。
しかしこうした日本一争いの話題は面白いですし、お互いの地域の振興に役立ちそうですね。これに関連して思い出したのが「餃子日本一」。栃木県宇都宮市と静岡県浜松市で争っているようですが、今年はどちらが日本一になるのでしょう?
■天保山渡船場
さて、「日本一低い山」の立て札の向こうに、建物と船が見えました。
渡し船の乗り場があるとは知らず、見に行くことにしました。
建物に到着し待合所に入ったのですが、運賃や航路についての案内や説明の掲示が見当たりません。スマホで調べてみたところ、この渡し船は大阪市の市営で、ここから対岸にある此花区桜島三丁目までの約400メートルを無料で結んでいると分かりました。
〇大阪市HP
ちょうど船が出航する時刻を迎え、大勢が乗り込んでいきました。自転車も持ち込めるのは、日常生活を支える渡し船らしい点ですね。
ぜひ乗ってみたかったのですが、この時間帯は30分に1本の運航で時間的に厳しかったため、今回は諦めました。
現在、大阪市には8か所の渡船場があり、15隻の渡し船が運航されているそうです。無料という点に少し驚きましたが、道路の代わりになっているからなのですね。
〇大阪市HP
この渡船場もそうですが、天保山公園の周辺は船着き場になっていて、様々な種類の船が停泊しています。公園のすぐ横に泊っていたのは、海上保安庁の巡視艇と、大阪市消防局の消防艇でした。
船体に青いラインの巡視艇と赤いラインの消防艇が並んで停泊していて、面白い光景でした。
時間もなかったので、この辺で切り上げて帰路に。
「日本一低い山」に登ろうと思って来ただけでしたが、予想外に見どころが多い公園でした。川と阪神高速の高架が織りなす景色も良いですし、公園内には今回紹介しきれていないスポットもまだあって、街中にある公園としては情報量が非常に多い印象を受けました。来てみて良かったです。
それにしても暑いです。バイクで走っていても灼熱状態。以前は真夏でも頑張って走れていたのですが、今の猛暑は身の危険を感じるほどです。帰宅後に軽い頭痛と少しの吐き気を感じたこともあり、猛暑がおさまるまでバイクで出かけるのは控えようと思います・・・。