ゆっきいDAYS

関西各地へのツーリングやバイクのことなどを書いていきます

乳酸菌「ラブレ」が発見された京漬物「すぐき漬け」(京都市)

冬を迎えた京都では千枚漬けが店頭に並ぶのが風物詩。ですが京都にはもう一つ、冬のお漬物があるそうです。それは「すぐき漬け」。先日ニュースで紹介されていたのを見たのでちょっと調べてみたところ、カゴメ乳酸菌飲料「ラブレ」の乳酸菌はこの漬物から発見されたとのこと。ラブレは時々飲んでいるので興味が湧き、老舗の漬物屋さんにすぐき漬けを買いに行ってみました。

 

上賀茂神社ゆかりの漬物

地域の特産品「すぐき」(かぶの一種)を秋に収穫し、塩漬けにして乳酸発酵させたのが「すぐき漬け」。江戸時代に上賀茂神社神職の家などで作られるようになり、次第に周辺の農家にも広がったそうです。現在でも、すぐき漬けを生産する農家や販売する店は上賀茂神社周辺に集中しているとのことです。

農林水産省「うちの郷土料理」

www.maff.go.jp

今は上賀茂まで行かなくても通販で購入できますし、一部のデパ地下等でも扱われていますが、せっかくなので観光がてら現地へ行くことにしました。ネットで検索するとホームページにすぐき漬けの詳しい説明が載っていた「御すぐき處 京都なり田」さんが良さそうに思えたので、目的地に決定です。

 

■老舗の漬物屋さん

世界遺産上賀茂神社の大鳥居の前を通り過ぎた先に、なり田の本店がありました。この辺りはとても風情ある落ち着いた町並み。神職の家が立ち並ぶ「社家町」と呼ばれるエリアで、古くからの町並みを守るため京都市により景観保存地区に指定されているそうです。

きれいに整備されていますね

 

家の門や路地の前に橋が架けられています

なり田もその町並みの一部で、趣ある大きな日本建築の建物。近づいた時は「ホントにココが漬物屋?」と一瞬疑うほどで、「すぐき漬」と書かれた幟旗が無ければ老舗旅館のようです。

これが漬物屋さんとは・・・さすが京都です

大きな軒行灯(のきあんどん)

のれんには鈴の絵が

引き戸を開けて店内に入ると、歴史を感じる立派な造り。陳列されている商品数は少なく、上品なショールームといった感じです。

すっきりして落ち着いた和の空間

高く開放的な天井

休憩スペースもあります

目当てのすぐき漬けですが、店の真ん中にある八角形の冷蔵ショーケースに並べられていました。

お店の主役なので真ん中に置かれてますね

すぐき漬けは切られておらず、1個ずつ丸ごとポリ袋に入れられ、口をゴムで縛ってありました。値段ですが、1個あたりではなく100グラムあたり432円。なかなかのお値段です・・・。

例えばこちらで1個1534円

どれも千数百円なのでちょっと躊躇しましたが、せっかくなので1個買いました。なり田はすぐき漬けを作り続けて300年以上とのこと。きっと値段に見合った美味しさなのでしょう。並んでいた他の漬物もすごく美味しそうだったので、しば漬けと千枚漬けも購入。思わず贅沢してしまいました・・・。

ふと気づいたのですが、ショーケースの中の他の漬物は真空パックなのに、すぐき漬けだけポリ袋に入れられています。なぜ?と思っていたら、ショーケースの横に真空パックのすぐき漬けもありました。お店の方に違いを尋ねてみると、真空パックのすぐき漬けは密封された時点で発酵が止まるかわりに賞味期間が長く、ポリ袋のものは密封されていないため発酵が続いて熟成が進むので早めに食べた方が良い、とのことでした。お土産用や食べるまで日にちがあるようなら、真空パックの方がおすすめだそうです。

こちらが真空パック版。値段はポリ袋版と同じでした

 

この真空パック版が置かれている台の後ろの壁には、大きな鈴が飾られています。玄関先ののれんにも鈴が描かれていましたし、包装紙にも同じ鈴が印刷されていて気になったのですが、お店のホームページで説明されていました。

1.お客様が「すずなり」となってお店に来ていただけるように

2.「なり田」の「なり」と鈴の「鳴り」をかけて

という意味が込められているそうです。

大きな鈴がインテリアのアクセントになっています

お店のHPには、すぐき漬けの製法や歴史なども詳しく掲載されています。

〇京都なり田HP

www.suguki-narita.com

 

すぐき漬けを買いに来ただけなのですが、古い町並みや雰囲気たっぷりの店舗も楽しむことができて大満足でした。

 

■こんなところでも売ってました

帰る前に周辺の様子を見てみようと、少し走ってみました。

社家町を離れると普通の住宅街で、畑も点在している郊外の風景。そろそろ帰ろうかと思っていたら、道沿いの農業用ハウスになぜか「すぐき漬」の幟旗が立てられていました。

なり田から2~3分走ったところです

「すぐき漬」と書かれています

バイクを降りて見てみると、なんとすぐき漬けの自動販売機がありました!

ロッカー型の自販機

なり田に比べるとグッと手頃な値段です

ここは売れて空になっています

売られていたのは「新物」と「古漬」の2種類で、なり田と同じく大きさによって値段が違うようです。新物は昨秋に収穫されたすぐきを漬けた物でしょうね。

農業用ハウスの脇に自販機が置かれているということは、このハウスですぐきが栽培されている(いた)のでしょうか。残念ながらハウスの中は見えず、看板等も無かったので分かりませんでした。

ただ、幟旗には「京の上賀茂すぐき倶楽部」と書かれています。ネットで調べると、JA京都市上賀茂支部の組合員で作るグループだそう。倶楽部ではすぐきの栽培技術、漬け込み技術の向上を研究し販売促進を行っているとのことです。ホームページにはすぐき漬けを上賀茂神社に奉納する様子もありました。

〇「京賀茂野菜 上賀茂農家から伝えたいもの」HP 

kyokamoyasai.jp

JA組合員の組織なのでなり田などのお店とは別だと思いますが、生産者自らが伝統を守る努力をしているのですね。

 

■乳酸菌「ラブレ」

出典:農林水産省「うちの郷土料理」

家に帰って、すぐき漬けを夕食に食べてみました。個人の感想ですが、これは絶品です!言葉では表現しづらいのですが、程よい酸味とまろやかな旨味、柔らかな食感が口の中に広がります。ごはんが何杯でもおかわりできますし、お酒にも合う大人の味です。見た目は色の薄いたくあんのようですが、全く異なります。これがすぐきと塩と乳酸菌だけで作られているとは・・・。リピート確定です。

さて、この美味しさを生み出しているのが乳酸菌「ラブレ」。京都府立医科大学の名誉教授でルイ・パストゥール医学研究センター所長の故・岸田綱太郎氏が、京都の男性に長寿の人が多いという調査結果を知り、乳酸菌に秘密があるのではないかと考えて京都の様々な漬物を調べたところ、1992年にすぐき漬けから未知の乳酸菌であるラブレを発見したそうです。研究の結果、このラブレは人の腸内環境を改善することが分かり、乳酸菌飲料サプリメントなどに利用されています。

ちなみにラブレは通称で、正式名は"Lactobacillus brevis subsp. coagulans"と言うそうです。

カゴメ公式HP

www.kagome.co.jp

 

すぐきは希少で珍重されていたことから江戸幕府の命令で他の地域へ持ち出すことが禁じられていたそうで、ずっと上賀茂神社の周辺で作られてきた漬物です。つまりこの地域に存在した乳酸菌で作られてきたわけで、まさに地域の味と言えます。

すぐき漬けの店は他にもあるので、次回は別の店でも購入して食べ比べしてみたいですね。それと、なり田で買った千枚漬けとしば漬けも非常に美味しいものでした。

塩分の取り過ぎにならないよう、注意しながら楽しみたいと思います。

賀茂川